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腹が立てども

『信心の浅い時には、人から悪く言われると

 すぐ腹が立って、こらえきれないで、すぐに仕返しをしようなどとする。

 しかし、信心が少し進んでくれば、

 人から悪く言われると、腹は立つけれども、信心しているからと思って堪えられるようになってくる。

 信心がずっと進んでくると、人から悪く言われても腹が立たない。

 腹が立つどころか、かえってその人が気の毒になる。』


ある人が白隠禅師に聞かれたそうである。

「あなたの怒った顔を見たことがありませんが、あなたには腹が立つということはないのですか」

すると禅師は、

「石の地蔵さんじゃなんだから、わしだって腹が立つぞ」

と答えられた。

「でも、和尚さんの怒ったところを見たことがないですが…」

と不思議がると、

「わしは腹は立つけど、怒らんだけじゃ」

と答えられたそうです。

腹は立つけど、怒らない。なんとも不思議な表現ですが、まさにその通りなのですね。

人間、腹を立てないと発奮もしませんし、社会の悪にも義憤を感じなくなる。

しかしそこで怒って、ただ感情に身を任せてしまうかどうか。ここに運命の分かれ道があります。

つまり、腹が立つという本能的な反応と、実際の行動との間に、私たちの「心」があり、

実際の行動を自分自身で選択する自由があるのです。

動物は本能によって行動することしか出来ませんが、人間には、人間独自の心をつかって、

全く新しい行動パターンを自分自身で描いていくことができます。

ここに人間に与えられた無限の可能性があるのです。

それこそがまさに、お道で言うところの「分け御霊」のお働きなのです。

私たちが本能の奴隷とはならずに、「怒り」と上手に付き合っていくためには、

神様から与えられた「分け御霊」がいつでもお働き下さるように、

心の平安を保つ稽古をさせて頂くことが大事なのです。
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