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原因と結果

山岡鉄舟(やまおか てっしゅう)と言えば、

幕末・明治の政治家として、

また無刀流を開いた剣術の達人として大変有名な人物であります。


鉄舟はさらに熱心な禅修行者でもありましたから、

道場においても弟子達に対し、剣の稽古だけではなく、

事あるごとに禅の教えを説きました。


ある日のこと。鉄舟が道場でいつものように禅の教えを説いていますと、

そのことを苦々しく思っていた若い一人の門弟が得意気に声を上げます。

「先生、今朝、私は家からこの道場へ通う途中で神社の鳥居に小便をかけましたが、

 この通り何の罰も受けておりません。神仏など迷信です。」

それに対し鉄舟は、間髪を入れず、

「この罰当たりめが!」

と大声で叱りつけました。


その門弟はびっくりしたものの、

「先生、どこに罰が当たっているのですか?」

となおも逆らいます。 

すると、鉄舟は静かに答えました。

「分からないのなら教えてやろう。

 いいか、神社やお寺の前を通るとき、きちんと礼拝できるのが、

 人間の教養というものだ。

 鳥居に放尿するなど、犬猫のする行為だ。

 お前は一人前の人間であり、しかも武士ではないか。

 武士たるものが、人間のすることさえできず、

 犬猫の仕業しかできないのが、どうして罰が当っていないと言えようか」


さて、原因と結果と言いますと、善い行いをすれば将来善い結果が生まれ、

悪い行いをすれば将来悪い結果が生まれるというのが通例ですが、

本当は、原因を作った時に結果も共に生まれているのです。


お道の教えに、このようにあります。

『真にありがたしと思う心、すぐにみかげ(恩恵)のはじめなり』

有難い心があるから将来助かるというのではない。

有難いという心になった、それがそのまま最善最高の生活で、

そこから後はそれが続いていきさえすればよいのであって、

それ以上の生活はないという教えであろうかと思います。


有難い心で神仏に手を合わせることができる、

人に優しく接し、物を大切に扱うことが出来る。

有難い心で善い行いができることそれ自体が、

喜ぶべき結果であることを忘れてはなりません。
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