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人間の真

作家で詩人の高見順さんの晩年の話です。
食道がんのために病床に横たわっていた時、ふと窓の外を見ると、
激しい風雨のなかを少年が新聞を配達している姿が見えた。
その姿に胸を揺さぶられ、次の詩を書かれたそうです。

なにかをおれも配達しているつもりで
今日まで生きてきたのだが
人びとの心になにかを配達するのが
おれの仕事なのだが
この少年のようにひたむきに
おれはなにを配達しているだろうか

 
ひたむきな新聞配達の少年の姿が晩年の作家魂に火を灯したのです。
私たちの心に火をつけ、生きる力を与えるもの。
それは、決して見た目や才能ではありません。
よいことでも、わるいことでも、人間が重大なことにぶつかって、
その人の本気が出ている時というのは、人を惹きつける力がある。
そこに人間の真(まこと)、本体が現れ出ているからです。

毎日を本気で生きていこうとするならば、感謝を中心に置かなくては続きません。
人間にとって感謝にまさる生き甲斐はないのです。
地位があっても、金持ちであっても、感謝できなければ決して幸福とはいえません。
今日一日、自らに与えられた仕事を精一杯に喜んでさせて頂けるかどうか。
後で振り返って、今日一日よかったなぁと生き甲斐を感じ、幸せを思うかどうかが一番肝心なことであります。

火は自身が暖かいばかりでなく、周囲のものまで暖かくします。
自身が明るいとともに、周囲のものまで明るくするのです。
人も同様に、自身が感謝で本気の毎日を送るなら、
その周囲にもそのような人や出来事が増えていくことになる。
それが道にかなうということです。

人の本質

『人が人を助けるのが人間である。
人間は、子供がころんでいるのを見て、
すぐに起こしてやり、また水に落ちているのを
見て、すぐに引き上げてやることができる。
人間は万物の霊長であるから、自分の思うように
働き、人を助けることができるのは、ありがたいことではないか。』

中国・清の第五代皇帝の雍正(ようせい)は、
国と人民のために寝食を惜しんで働いたことから、中国史上最も勤勉な皇帝とも言われています。
その雍正が学問をするうえで最も大切にしたことが、「自得(じとく)」という言葉でした。

自得とは「自己を得る」。
つまり、「自らを知る」ということですが、雍正は自得園という別邸まで建てて、
自らを知ることに真剣に取り組んだそうです。

自得の大切さは、なにも東洋だけの考えではありません。
ソクラテスも「汝、自らを知れ」。
ゲーテも「人生は自分探しの旅だ」と言っています。
考えてもみますと、私たちは学ぶことにせよ、働くことにせよ、
名を成そう、人から賞賛されよう、とばかり考え躍起になるものですが、
そこに執着するあまり、自己というものを見失いがちであります。

しかし誤ってはならないことは、人は社会的に何かを成し遂げたから偉いのではなく、
その人に与えられている生命自体が尊いのです。
自らを知るとは、その自らの生命に託された「願い」を知るということ。
何をするかという手段ではなく、人間とは何かという根本を知ることです。

『人が人を助けるのが人間である』
ということは、私たちが学ぶこと、働くこと、活動すべての中心に
「人を助ける」ということを置けば間違い無いという教えなのですね。

つまり、学ぶということは、自らを高めて人の役に立つために学ぶのであり、
働くということも、自らの身体、能力を用いて人が助かることをするために働くということになります。
自得とはこのことを悟り、実行して行くことであり、
自得した者が成す仕事とは、その職業が何であれ、自他ともに幸せをもたらす仕事となるのです。

花の命は短くて?

仏道に「往生」という言葉がありますが、
これは一日一日を大事にして生きる生き方のことです。
そして死ぬのは、神さま仏さまにお任せすればよい。

「花の命は短くて」という有名な言葉がありますが、それは人間の嘆きでしかありません。
坂村真民さんの『花』という詩に、このようにあります。

花には
散ったあとの
悲しみはない
ただ一途に咲いた
喜びが残るのだ

花は、自らの美しさを誇示しょうとして咲いているのではありません。
人間が見ていようと、見ていまいと、ただ懸命に、「花だから咲く」のです。

自分に与えられたいのちを、与えられた環境の中で、与えられた役割を精一杯、
ただひとすじに果たして、次の世代にいのちをつないでいくのです。

朝顔は朝に咲いて夕べにしぼみ、夕顔は夕方に咲いて夜明けにしぼむ。
でも、一生懸命に咲いたのですから、朝顔も夕顔も決して悲しんでいないでしょう。
咲くのが、朝顔、夕顔の喜びなのです。

私たちが花を見て美しいと感じるのも、その花の形や色などの見た目だけにあるのではなく、
自らの生命を全うし、ただ一生懸命に咲いている、
そのひとすじの気持ちが私たちを感動させるのですね。

私たち人間にもまた、自らに与えられた生命を精一杯に喜び、
全うする役割が与えられているのではないでしょうか。

今日一日、自らに与えられた仕事を精一杯に喜んでさせて頂けるかどうか。

自分の中から喜びを生み出す稽古こそが信心であります。
人間にとって感謝にまさる生き甲斐はないのですから。

この自分の中から、どれだけの喜びが現れ出るか。
花も咲かせ、実も結ばせて、ただひとすじに
咲き切ろうとするところに美しさが生まれるのです。

心から満足するためには

高きに登りたいというのは、人間の性なのですね。

子供は椅子や机の上で万歳をする。大人になれば、山の絶頂から御来迎を拝む。

では、それで満足するかと言えば、決してそんなことはない。

高きに登る道中で、人間が満足出来るのは一瞬だけのことであり、

すぐに「もっと欲しい」という欲望に駆り立てられる。

富士山に登った者は、次はもっと高い山を目指すのです。もっと高い山を登ったならば、次は月や火星を目指すのです。

もし高きに登ることだけを人生の目的とするならば、富士山に登ることが出来ても、

エベレストに登ることが出来なければ目的は達せられません。

たとえエベレストに行くことが出来ても、月に行くことが出来なければやはり目的は達せられないのです。

かくして高きに登りたいという人間の切なる願いというのは、必ず中途半端に終わるのです。

名声や地位やお金を目的とするのも同じことで、

それはどこまで追って行っても上には上があって、ついに最後の満足は得られることなく、

人生は空虚な夢想に引きずられていくに過ぎません。

名声や地位やお金というのは、目的としてハッキリしているようで実は大変ぼんやりしており、

アテにならないものなのです。

そこで、人生の本当の目的について考える必要があります。

そもそも山へ登るのは、頂上に達するのみが目的ではありません。

むしろ途中の景色を観賞するところにこそ、本当の楽しみがあります。

この人生においても、目的は何か一定のものにあるのではなく、行く道々にあって如何に喜び楽しみ、

道中出逢う人々と如何に仲良く楽しい時間を過ごせたかということこそが大切だと思うのです。

千の富に安心出来ない者は、万の富にも安心することは出来ない。

一つの名では満足出来ない者は、二つの名でも満足することは出来ない。

安心出来るかどうか、満足出来るかどうか。それは富や名声の大小にあるのではなく、己の心構えにあるのです。

心構えを改めれば、この人生をより安心に満足して歩んでいくことが出来るでしょう。

生きる用意をせよ

曹洞宗の開祖である道元(どうげん)禅師に、弟子がこのように尋ねます。

「人間は皆仏性(ぶっしょう)を持って生まれていると教えられましたが、

仏性を持っているはずの人間に、なぜ成功する者としない者がいるのでしょうか?」

すると、道元はこう答えました。

「教えてもよいが、一度自分でよく考えてみなさい」

そこで弟子は一晩真剣に考えてみたのですが、やはり分かりません。

そこで再び道元禅師に尋ねたところ、このように答えました。

「それならば教えてやろう。成功する者は努力する。しない者は努力しない。その差である」

弟子はすっかり納得し、大喜びしました。

しかしその晩、新たな疑問が湧いてきました。

仏性を持っている人間に、どうして努力する者としない者が出てくるのだろうか。

そこでまた翌日、道元禅師にそのことを尋ねました。するとこう答えました。

「努力する者には志がある。しない者には志がない。その差である」

弟子はまた納得し、喜んで帰りました。しかしその晩、またまた疑問が湧いてきます。

仏性のある人間にどうして志がある者とない者があるのか。弟子はまた尋ねます。するとこう答えました。

「志のある者は、人間は必ず死ぬということを知っている。

 志のない者は、人間が必ず死ぬということを本当の意味で知らない。その差である」


何事も成功するには、志を持ち努力する必要があるが、そのためには死というものを知る、

つまりこの人生が有限であるという、切実さを持たなければならない、そのように弟子に諭したのであります。

お道の教えに『死ぬ用意をするな。生きる用意をせよ』とあります。

死に対する覚悟とは、安心して死ぬために定めるものではありません。

死に対する覚悟がなければ、生きている間も何事に対しても覚悟が定まらないから、

死に対して覚悟を定める必要があるのです。

切実に全力を尽くして今日という日を送るなら、

死ぬという事実もいつかの今日の出来事でしかなく、悔いは無い。

そういう生きる用意をしたいものです。
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