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どうにもならないと思う時

『どうにもならないと思う時にでも、わめき回るようなことをするな。

 じっと眠たくなるような心持ちになれ』


中国・明の時代に書かれた、『菜根譚(さいこんたん)』という書物の中に、

「口乃心之門(口はすなわち心の門なり)」とあります。

食物と言葉の出入口である我々の口は、実は心の出入口でもあるのですね。

この口を慎重に守らなければ、心というものは気付かぬ内に洩れ出て流されてしまう。

ですから「心の門」である口にいつも注意を払いなさい、と教えているわけです。

また、門(出入口)というからには、口から出た言葉が、

やがて返ってくるという意味も込められているのでしょう。

昔から言霊(ことだま)という言葉があるように、一度発した言葉には魂が宿るものです。

そしてその言葉は後に、言葉を発した人の心、大きく言えばその人の人生をもつくりあげて行くのです。

一度自分が言った言葉は、やがて必ず自分のもとに返ってくる。

いよいよ心の門である口の扱いが大切になってまいります。


しかし、そうは言っても人間ですから、ついつい感情が口からこぼれそうになる。

その感情が感謝や喜びであれば問題無いのですが、不足や怒りであっては、

その後の人生をも台無しにしかねません。そのような時、どのようにすればよいか。

そういう時こそ、じっと眠たくなるような心持ちになることが大切です。

それがわめき回りたくなる状況から抜け出す唯一の道なのです。

口を開けば感情に流されやすい。感情を口に出してしまえば、

その言葉に流されてしまうのが人間というもの。

ならば、心の門である口をしっかりと守って、時には鍵を掛けて固く閉ざすことも大事なのです。

人や物事を責めようとする「思い」をそのまま口に出さず、

静かに神様へと心を向けていくことが、大切なのですね。

表行よりも心行をせよ

『人を不足に思わず、物事に不自由を行とし、

 仕事に勤め、身分相応を過ごさぬよう倹約をし、

 だれにも言わずに行えば、これ心行なり』


明治中期の頃、ある方が金光教祖のもとに参られ、このような相談をされました。

「徳を積ませて頂くためにしばらくの間、

 山に籠もって修行させて頂こうと思うのですが、いかがなものでしょうか」

すると金光教祖は、このように御取次されました。

「それは結構ですね。しかし、何もわざわざ不自由な山に籠もらずとも、

 心の中に山をこしらえて、その中で修行をされたらどうでしょうか。

 自分が山に入った心になっていれば、どんなに不自由なことがあっても、

 また奥さんの作った料理がたとえ不味かったとしても、決して不足を言うことはないでしょう」


さて、修行と言いますと、形を正すことによって心を正す表行(わぎょう)と、

まず心を正して形にまで及ぼす心行(しんぎょう)との大きく二つに分かれます。

そして大抵の者は表行をしたがる。これは私自身もそうでありましたからよく分かります。

元来人間の心というのは大変変わりやすいものですから、心をただ心だけで維持しようとするのは大変難しい。

そこで、生活の中に見える形として現し、そこで維持していくようにすると、

自分の信心があたかも進んだような気分になります。寒中に冷水を浴びたり、断食したりすることがこれに当たります。

しかし、そうした表行をして、どれだけ我が身を苦しめてみても、

残念ながらその効果とは意外と小さく、短いものであります。

山の仙人にはなれても、里で仙人になることは今も昔も大変難しいのですね。

そこで金光教祖は、「表行よりも心行をせよ」と教えておられるのです。

心行とは身に起こる一切の問題、不自由を「行」と受け切るところにあります。

しかし、受け切ると言っても、それがただのやせ我慢、忍耐であっては、それも表行となってしまいます。

真の心行とは、そこに山をこしらえて、一歩進んで嬉しい心で受け切る器を養うところにあるのです。

心に真を持つ

『広大なおかげ、広大なおかげと言うが、

 おかげとは氏子のめいめいの真に映る影のこと

 じゃから、神様に大きな真を向けて見よ、

 大きなおかげがわが身にいただける。

 小さな真で大きなおかげはもらえぬぞ。

 影は形にそうと決まったものじゃ。』


天気が良ければ、機嫌が良い。しかし天気が悪ければ、機嫌も悪い。

これでは信心させていただいている甲斐がありません。

信心させていただくとはどのようなことか。

それは例えて言うならば、自らの心に天気を持つということです。

雨が降ろうが陽が照ろうが関係なく、いつも心が晴れ渡っている。

周りの環境がどうであろうとも、自分自身に有り難い心が定まっていて、

その有り難い心を持って人に親切にし、物事にあたっては実意丁寧な生き方ができるようになる。

そのような本当にしっかりとした人間にならせていただくことを願い、実践することが信心だと思うのです。


そして、そのような信心をさせていただくことによって、

だんだんと運命が良い方へ変わっていくのですね。

私たちの運命、現在いる環境とは、実は自分自身の心が定めた場所なのです。

それは今の自分にとっての最適な場所であり、最善の学びの場に違い無い。

しかし、もし私たちが今いる環境で必要なことを学び、そして成長し、自分の心が変わったならば、

次の新しい環境が目の前に現れることになる。つまり、今の環境から「卒業」するのですね。

大半の人が自分の環境が改善されることを願いますが、自分の心を改善することには興味がない。

いつになっても自分の環境を改善できないでいる理由が、ここにあるのです。

幸せも成功も、私たちの心の影なのです。

実体が大きいほど影も大きくなる。

心に大きな真があれば、それだけ大きなおかげが受けられるのです。

祈ること

『願う心は神に届くものである。』

「念ずれば花ひらく」で有名な、坂村真民先生の詩は、

年令、職業を間わず幅広く愛唱され、その生き方とあわせて、「人生の師」と仰ぐ人が多い。

先生が八歳の時、小学校の校長をしていた父親が急逝し、一家の生活はどん底に落ちます。

父親の死に目に会えなかった長男の先生に、

母親は父の喉仏を与え、「今日から毎朝水を供えるように」と命じました。

それから先生の早起きが始まります。

誰も起きないうちに共同井戸の水を汲みに行き、父の喉仏に供えるのが日課となり、それは生涯続いたそうです。

母親は五人の幼子を育てるために懸命に働きました。

その母親の働く姿、そして母親が常に口ずさんでいた、

「念ずれば花ひらく」という言葉が、先生の心に焼き付いて、あの有名な詩が生まれたのです。

 
念ずれば花ひらく 
苦しいとき
母がいつも口にしていた
このことばを
わたしもいつのころからか
 となえるようになった
 そうしてそのたび
 わたしの花がふしぎと
 ひとつひとつ ひらいていった


「祈ることしか出来ない」という溜め息混じりの言葉をよく耳にします。

これは、「自分には何も出来ないから、せめて祈りはするが、

祈ったところでどうにもならない」と、「祈り」を過小評価しているのではないかと思うのです。

「祈り」には力があります。

このことは、本気で祈り、願い、念じた者のみが分かることです。

つまり、「祈ることしか出来ない」のではなくて、どんな絶望的な状況にあっても、「祈ることだけは出来る」のです。

「念ずれば花ひらく」という言葉を、私たちもいつも心に留めておきたいものです。

信心の肝心要

『神様は目にこそ見えないが、

そこら辺りいっぱいにおられるので、神様の中を分けて通っているようなものである。』


教育者である、東井義雄先生の詩に、このようにあります。

見えないところで 見えないものが
見えるところをささえ
  生かし 養い あらしめている

人間、目に見えないものは信じられないものです。

目に見えないものは、いくら人から説明されてもやはり見えないものですから、疑えばキリがありません。

「神を信じられない」と言われる一番の理由も、目には見えないからでしょう。


しかし、この世の実際とは、目に見えないものが、目に見えるものを支えているのですね。

金魚鉢の中を泳ぐ金魚は、鉢の中の水を泳いでいることを知らないのと同じように、

人間も目に見えない大きな働き、そのお恵みの中で生かされていることが自分自身にはどうしても分からないのです。


生きるということは、神様のお働きの中で生かされ、生きているということ。

信心するということも、神様のお働きの中でしているのであり、

神があるかないかと論じるのも、神様のお働きの中でしているのです。


ですから、このお道では参拝するにしても、仕事をするにしても、何をするにしても、

「させて頂く」とか「神様のおかげを頂いて」という言葉をつかうのですね。

神様が分かるということは、知識や学問として神が分かるというものではなく、

信心が進んでいく中で、自分の命、生活は自分だけのものではなく、

一切の働きによって「生かされて生きている」ということが分かるということなのです。

神様がどこにいて、どのような姿で、男か女か、などというのは、さしたる問題ではありません。

「生かされて生きている」ことに感謝をして生きていくこと。

肝心要のところはここにあるのです。
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